金庫の金、動かさずに売買・担保に?アウラムが国の制度で法的考え方を確認、実物資産のデジタル活用が加速か

はじめに:金庫の金、動かさずに売買・担保に?

もし、ご自身の金庫に保管している金(ゴールド)を、現物を動かすことなく売買したり、担保として活用したりできるとしたら、いかがでしょうか?

株式会社アウラムは、この新しい実物資産の活用方法について、国の制度を活用して法的な考え方を確認しました。金庫に眠っている金を、ブロックチェーン技術を活用した「動産デジタル台帳」に記録することで、その所有権や担保権を第三者に示せるようになる可能性があるのです。この画期的な仕組みは、実物資産の保有や活用に取り組む法人や金融機関にとって、大きな変化をもたらすかもしれません。

なぜ今、実物資産の活用が注目されているのでしょうか?

不動産には「登記制度」があり、誰が所有しているか、担保になっているかなどを第三者に主張(対抗)できます。しかし、金インゴットのような動産(動かせるもの)には、不動産のような一般的な登記制度がありませんでした。

そのため、動産の所有権を第三者に主張するには、原則として「引渡し」が必要とされています。つまり、金庫に保管された金は、その価値があるにもかかわらず、現物を動かさないと売買や担保としての活用が難しいという課題がありました。金融機関も、動産を担保として扱うことに慎重にならざるを得ない状況だったのです。

しかし、安全のために金庫に保管された金を、動かすことなく「いつ、誰のものになったか」を第三者に明確に示せる仕組みがあれば、安全な保管と資産活用を両立できます。このような背景から、アウラム社は「動産デジタル台帳」の構築を進めています。

また、近年では「オンチェーン金融の推進」が政府の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に明記され、実物資産をデジタル化する「トークン化(RWA)」が世界的に広がりを見せています。このようなデジタルの流れの中で、ブロックチェーン上の記録と日本の法的な権利移転をどう結びつけるかが課題となっていました。

アウラム社が確認した「動産デジタル台帳」とは?

アウラム社が開発を進める「動産デジタル台帳」は、金インゴットなどの実物資産の所有権や担保権の状態を、現物を金庫から動かさずにブロックチェーン上に記録し、第三者が独立に検証できるようにする仕組みです。これにより、実物資産の売買、担保化、決済を一体で扱えるオンチェーン金融プラットフォームの構築を目指しています。

今回、アウラム社は「グレーゾーン解消制度」を活用し、この仕組みの法的な考え方を確認しました。グレーゾーン解消制度とは、新しい事業活動が既存の法規制に抵触しないか、事前に国に確認できる制度のことです。

具体的には、シリアルナンバーで特定された金インゴットを倉庫業登録を持つ事業者の金庫に保管したまま、売主がアウラム社のシステムを通じて保管者に対し、以後は買主のために占有すべき旨を指図し、買主がこれを承諾することで所有権移転の「対抗要件」が具備されるか、という点を照会しました。対抗要件とは、簡単に言えば「私はこの物の所有者である」と、第三者に対して法的に主張できる条件のことです。

これに対し、法務大臣および経済産業大臣から「民法第184条(指図による占有移転)により同法第178条の対抗要件が具備されるものと考えて差し支えないと解される」との回答がありました。これは、金庫に保管された動産を動かさずに取引するための、法的な考え方が確認されたことを意味します。

グレーゾーン解消制度への申請案件

経済産業省のウェブサイトでは、本件が「ブロックチェーンを活用した金インゴット売買サービス」として公表されています。

「指図による占有移転」について詳しく知りたい方は、以下の解説記事もご覧ください。

この回答により、アウラム社の動産デジタル台帳に記録された「いつ、誰のものになったか」を、現物を動かさずに第三者へ主張するための法的な考え方が明確になりました。これは、金地金を担保とする融資など、実物資産の金融活用に向けた実務上の基盤となるものです。ただし、この回答は照会者が提示した事実関係を前提とする現時点の見解であり、司法判断を拘束するものではない点にご留意ください。

法人向け「招待制運用実証」がスタート

アウラム社は、年内の招待制サービス開始に向けて、実物資産の購入・保有・台帳管理を実際の商流で検証する運用実証への参画法人を募集しています。第1期の対象資産は金地金(金インゴット)です。

対象となる法人

  • インフレや為替変動への備え、事業継続計画などの資産保全を目的として金地金の保有を検討する法人。

  • 地金商、宝飾・電子材料などの製造業をはじめ、金地金を事業で用いる法人。

  • 金地金を担保とする与信の実証に関心のある金融機関・貸金業者。

第1期は10社程度が想定されており、アウラム社のウェブサイトから問い合わせが可能です。実証では、LBMA(ロンドン地金市場協会)のグッドデリバリー認定を受けた新品の金インゴットを、提携する地金商が仕入れ、金庫に保管したまま参画法人が購入する設計です。現物は購入の前後を通じて金庫から動くことはありません。

運用実証への参画にご興味のある法人は、下記よりお問い合わせください。「お問い合わせ内容」の冒頭に「運用実証への参画」とご記載ください。

この新しい仕組みがもたらす影響と、今後の展開

この仕組みは、法人が金を実物で保有する意味合いを大きく変える可能性があります。インフレや為替変動への備えとなるだけでなく、貸借対照表に載る資産として扱え、現物を動かさずに保有することで盗難や輸送のリスクを避けられるようになります。そして、今回の法的確認を基盤として、将来的に担保としての活用も期待できるようになるでしょう。

法人がゴールドを保有する際の税務や会計については、以下の記事も参考にしてください。

アウラム社は、今回確認された構成を業界の共通基盤として、地金商や保管事業者への動産デジタル台帳の提供に取り組んでいく方針です。また、金地金だけでなく、他の実物資産への対象拡大も目指しています。

将来的には、ステーブルコインやトークン化預金による決済との接続、実物資産を担保とする融資など、オンチェーン金融の実装に取り組む事業者や金融機関との連携も歓迎しています。さらに、金インゴットが高額であるため、小口の需要者が所有権に基づく保有にアクセスしにくい現状を踏まえ、特定の金インゴットの共有持分(小口化)へ同じ構成を拡張する次の照会も準備しているとのことです。

投資・資産形成における注意点

金(ゴールド)は、一般的にインフレヘッジや有事の金として注目される資産ですが、その価格は常に変動しています。市場ニュース、経済指標、金融政策、地政学的な出来事など、さまざまな要因によって価格が大きく動く可能性があります。そのため、金への投資には、損失が発生するリスクがあることを理解しておく必要があります。

今回の発表は、実物資産の活用における法的な考え方が明確になったという大きな一歩ですが、現時点では法人向けの招待制実証の段階です。個人投資家の皆さんが直接利用できるサービスとして普及するには、まだ時間がかかる可能性があります。

投資はご自身の判断と責任で行うものです。今回のニュースは実物資産の可能性を広げるものですが、投資を検討される際には、リスクを十分に理解し、ご自身の資産状況や投資目標に合わせて慎重にご判断ください。

まとめ

  • アウラム社は、金庫内の金地金を動かさずに所有権を移転する仕組みについて、国のグレーゾーン解消制度で法的な考え方を確認しました。

  • これにより、「動産デジタル台帳」を活用した実物資産の売買や担保活用が、よりスムーズに進む可能性が広がりました。

  • 現在、法人向けの招待制運用実証への参画を募集中であり、将来的に個人向けの小口化や他の実物資産への展開も期待されますが、金投資には価格変動リスクがあるため注意が必要です。

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